日本赤十字社大阪支部が育てた子供。「人間の根源を知る」

最終更新: 2019年11月6日


続き。


初日のはじめの各校の先生達の挨拶などを聞きながら

私はあることを思い出していた。


小学生の時に習った原爆のこと。

修学旅行で広島に行ったので、もちろん習った。


私は疑問を持った。

そして図書館に行き、

「広島の原爆」という写真集みたいな大きな本を借りて

自分の家のリビングで読んだ。

すると父が

「お前はなんでそんなもん読んでるねん!」と怒鳴った。

多分、親としてか何かは知らないけど、とりあえずそんな悲惨なものを目に入れて欲しくなかったのだろう。真意はわからないが。


私はそれでも読むことを止めなかった。

自分の部屋で読んで、家の中で読むのがダメならと

図書館に行き、図書館で読み続けた。

棚から大きな資料を取り出しそのまま床にぺたんと座り読む。

一緒に並んでいた、アウシュビッツ収容所の資料も読む。

広島、長崎、ドイツ、この三つをひたすら何度も何度も

そして何日も何日も通い読んだ。


「なんでこんなことが起こるの?」

「大人達もテレビの中でも人は殺しちゃいけませんっていうのになんで殺すの?」

「なんで先生やお父さんやお母さん達が言ってることと逆のことをするの?」

「みんなで殺すならいいの?」

「どうして爆弾を落とせたの?」

「爆弾を落とした人はどうしたの?」

「赤信号はみんなで渡ったら怖くないって聞いたけど、それなの?」

「実験?どうして?なんで実験するの?なんのために?」


「なんで?」


この疑問を解消するために読み続けた。


でも、この疑問を大人にぶつけても誰も答えてくれない。


「大人でもわからないことをどうして大人はするの?」


この持ち続けた「?」というものの答えがここにあるのかもしれないと思った。


この時私は13歳で

それはそれはもう瞬発的に早い鉄砲水そのものだった。

小学校の先生達やきっと親もなんとかヤスリをかけて丸くしようとしていたのだろうけど、

一瞬で次のところに行く私を捕まえてヤスリはかけていられない。

それほど私は一瞬で判断して行動していたからだ。

その速さは大人の想定外だった。常に大人達が思ってる速さを簡単に壊した。

「早く!早く!早く答えて!そうしなきゃ先生の後ろにいる蝶々のところに行けないよ!」

そんな感じで私は目に入ったものを一瞬で知りに行く。

そういう子供だった。


青少年赤十字(JuniorRedCross略してJRC)では

「気づき・考え・行動する」

を基本に動く。

加盟校の引率の先生が子供を連れて集団で行動をする。

そこに日赤大阪支部の職員が入り、

その各校の先生達や職員達は大まかな指示をする。

けれども細かい指示は一切なし。

基本となる時間割みたいなものはある。

けども常に新しい情報に変わる。

知りたければ、決められた掲示板に行く。

そこに新しい情報が書いてある。

けれど、驚くほどシンプル。

例えば、

「15時に二階の第二室で救命救急法」と書いてるのが

「15時30分に一階の大会議室に変更」これだけだ。

何を持っていくかなぜ変更になったのかは書かれていない。

そしてわからなくて

「先生!次どこですか?」と聞いても口を揃えて先生と日赤の職員達は

「掲示板に行きなさい」しか言わない。


15分前は原則。


大人達は徹底して口を出さない。

「あれをしなさい」

「これをしなさい」

「これじゃなきゃだめ」

「そんなん意味がない」

など一言も言わない。

とにかく何も言わない。


子供の私達が自分で気づき考え行動することを

ひたすら見守る。


何があっても口を出さない。


自分で考えなければ、行動もできない。

気づいても行動するためにどうしたらいいかが全くわからない。

しかし、この鉄砲水は行動することが生きることなのに

行動ができない。

気づいた。でも、どこに何をどう持って行動すればよいかが全くわからない。

残った道は「考える」しかない。

そして逆を言えば、どんな行動をしても大人は止めに来なければ横からも入ってこない。

徹底的に走り回る鉄砲水の女の子の動きを強制的に止めに来たことは

一度としてもない。

たった一度もない。今日まで一度もない。

理由はとても簡単だ。

「尊厳」を守ってるからだ。

鉄砲水には鉄砲水なりの何かの思いがあって走っている。

それを止める権利はない。


この鉄砲水と衝突したのが、

安原武志さんだ。

とにかく安原さんは熱い。情熱がたぎりすぎて熱い。熱すぎる。

燃えすぎて火の粉がこっちにも飛んでくる!っていうぐらいに熱い。

それは、この鉄砲水の私も全く同じだった。

けど、決定的に私と違うところがあった。


それが


赤十字社の基本原則

「人道」

「公平」

「中立」

「独立」

「奉仕」

「単一」

「世界性」

この7原則から反することはない。

赤十字社の目的は「人道活動の達成」であり、

動機は「人道」にあり、この動機(目的)を達成するためにこの原則がある。


安原さんが燃えたぎる炎を私に向けるとき、それはすなわち

私の意見を一旦全部聞き受け入れ、その上で発言する。

私が行動した意思や意見をとりあえず全部受容する、全受容する。

批判も否定もなく、否定でもなければ肯定でもない。

その上で

「わかった。お前の気持ちはよくわかった。でも俺は〇〇だと思う。だから〇〇してみたらどうだ」

という感じである。


と言っても熱い人なので実際は

「待て待て待てーーー!!!お前ちょっと待てーーー!!!一旦足を止めろ!!!」

と言って追いかけてくる。

走ってる私からしたら止めにかかるのでぶちキレる。

「なんで止めんのよ!!指示がないからとにかく動かな答えがないやん!」という勢いで。

勢いはそのままで出る言葉もなくまだ走る。

けど大声でもう、ある意味怒声のような声で熱い人が追いかけてくる。

「なんでや!!なんでその行動をするんやーー!!!」

ようやく私の足は止まる。

「え?なんで?そんなんもわからへんの?」

このまま口から私は言葉を出す。

ようやく視界に安原さんの顔が入って目と目を見て上の言葉をぶちギレ口調で言う。

「はぁ?!なんでわからへんの!!」とこちらも怒声。

「わかるわけないやろう!お前が動く理由を言わな俺らも周りもお前がなんで動いてなんでその行動してるかわからへん!!(怒声)」

「だって時間が変更になってるねんもん!でも救急法の三角巾も筆箱も部屋に置いてるねんもん!走らな間に合わへんやん!!(怒声)」

「そうか、そう言う理由か。そしたら三角巾と筆箱を最初から持ってたらいいんちゃうんか!??(まだ怒声のまま)」

「!!そっか!ほんまや!(怒声の大きな声のままで疑問が解けてスッキリした声になる)」

「・・・・そしたらそないに走らなくてもいいやろう?走るなとは言わん。けれどその走ってる時に勢いに押されて誰かが怪我をしたらどうするねん?!(まだちょっと怒声)」

「あかん!怪我したらあかん!」

「じゃあどうしたらいいと思う?考えてみろ」

「・・・・・・・速度を落とす?」

「そうそう。そう言うのもあるな。他にはどうや?ないか?」

「・・・・・周りをよく見る?見ながら最速で走る?」

「それもあるな。お前の言う最速はどこや?何を持って最速って言うてるんや?」

「時間に間に合うこと!」


こう言う感じで私の走る姿にひたすら追いかけ回すし

二人で大声で喧嘩のように聞こえる「意見のやりとり」が始まった。


鉄砲水の女の子の「?」を持ったままそのスピードの気持ちを尊重し

けれど、それがあまりに鋭いから人を殺していく。

その勢いを落とさず、けれども誰もを切りつけていくのではなく

持ってるその速さをどう生かしたら良いかそのために何が必要か

それを全力で大の大人が見てくれも何もかもを捨て

私のスピードの中身がどうしても知りたいとついていきたいから

教えてくれと現れたのが、

安原さんだった。


初めて私に匙を投げない大人が現れた時だった。


大声で私が探す「?」と言う声を

ひたすらひたすら「!」になるまで疑問を私に投げてくれる安原さん。

「?」と言うものに

「?」って聞いてきた大人が初めてだった。

「?」と問われた時に

「!」で返したくなるのが私だからだ。


そのために日本赤十字社大阪支部は

私に「考える」と言うスペースを与えた。


その先頭を切ったのが安原さんだった。



これが私がJRCを卒業する19歳まで続いた。


写真に登場しているのは

清水谷茂之氏(しげ)

森島(坂田)真菜氏(もりしぃ)

双方、後輩。

そして安原武志氏


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